びあぶれいく
Orion
上田真弓のオリオンいいたい放談
ウチナーンチュにこだわり、撮り続けてきた異色の女性カメラマン・石川真生。何者にも屈せず、歯に衣を着せぬ論調で多くの共感と反感を同時に買うそのパワフルな生き方が一冊の本になった。その自由で、まっすぐな感性にふれた。
サブタイトル1
真弓 うわぁ、真生さんお久しぶりです。
石川 ホント久しぶりだね、元気してた。十年振りぐらいだよね。あの頃、学生だったもんねー。
真弓 はい、ずーっと沖縄でやってます。一人で(笑)。真生さん読みましたよ、本。出版おめでとうございます。まず、乾杯といきましょうか。祝出版ということで。
石川 ホント久しぶりだね、元気してた。十年振りぐらいだよね。あの頃、学生だったもんねー。
真弓 はい、ずーっと沖縄でやってます。一人で(笑)。真生さん読みましたよ、本。出版おめでとうございます。まず、乾杯といきましょうか。祝出版ということで。
二人 カンパ〜イ!
真弓 さっそくですけど、本の反響スゴかったんじゃないですか。
石川 ん、そうだね、いろんな意味でインパクトあるからね。この本を書いた後である親しい男から電話がかかってきて「真生、俺のことは書いてないだろうな」って、だから「書いてあるかも知れないから、全部買い占めたらって言ってやったんだけど、一〜二回ヤッただけで誰が書くか、少なくとも二十回以上ヤッてないとねって言ってやったわよ。だって、本当に一〜二回なんだもん(笑)。だからさー、私と関係のあった男たちが戦々兢々としていたと思うよ。名前なんか書いてないのにさ、どんな形で出ているかわかんなくてビクビクしてたみたいよ。私は、ホームページでもそんなコト書いているから、知り合いなんかも、あそこまで書いていいのかっていわれるけど、昔からこんな性格だからね。
真弓 そうですよね、昔から、本を書くずっと前からそうでしたもんねー。
石川 昔から何でもしゃべってきたし、全然変わらないよ。ただ、しゃべってたことを本にしただけ(笑)、でも知らない人はびっくりするみたい。
真弓 男の人もしゃべられるのは覚悟しているのかな。
石川 まっさか、それはないでしょ、いちいちそんなこと考えてヤラないでしょ(笑)。
放談風景1 放談風景2 放談風景3
サブタイトル2
真弓 真生さん今本を出そうと思ったのはどうして?
石川 実はさ、2000年に腎臓ガンの手術をしたのよ、あの時は初めてのガンでさ(笑)もうガンっていうと死ぬというイメージしかなかったわけ、先生が初期で小さいから大丈夫だって言ってくれてたんだけど、医者は嘘つくから信用してなかったのね(笑)。ガタガタふるえてさ、それでもいざ、切っちゃうと開き直っちゃったわけ。でも、一年後の去年の十月に今度は直腸ガンだって言われて、でも、その時は二度目だし、連載ものも抱えていたから、検査入院の時もずっと病院で原稿書いていたりしたんだけど、検査終ったらあなたは人工肛門になりますって言われて大ショック。私まだセックス盛りなのよ。四十代なのに、八十のババアじゃないんだから先生ヒドイよーって泣いたよ。そしたら生存率が五分五分だって言われて、覚悟したわけ。あとどんなことがしたいのかっていうのを考え始めたわけね、今まで、せいぜい一週間くらいの予定しかたてたことなかったんだけど、いろいろ撮りたい写真があったから手術を決意したわけ。そんな話を新聞社にいる友人に話してたのね、それで、手術も終って退院したら、この友人が本を出そうっていうのよ。最初は「何言ってんの、なんで私がそんなことしなくちゃいけないのよ、タレントがよく出しているような暴露本みたいのなんかイヤだからね」って言ってたんだけど、その友人がいうには、来年は復帰三十周年だし、本も売り易いよ(笑)って、それに真生さんが最後の仕事するのもお金いるんだから全国で売ってお金もうけしなさいって、言われて、じゃあ、わかった(笑)って、ただ、あなたが出版社やらすべての手配はしてよ(笑)っていうことで話はついたのね、自分は子も孫もいて、写真の仕事ずっと続けてきた、その生きた証として、本は残るからいいかって、センチメンタルジャーニーしちゃったわけよ(笑)。そして年が明けたらその友人が本当に編集者つれてきたわけ、その人が又、プロでね、ドドドッと話が進んでいろんなことが決まって、そうなると、私、開き直るのも早いから、わかった。全て洗いざらい、しゃべるし、どの写真を使ってもいいよということになったわけ、もう、生存率の話やらでさ、開き直りにもさらに磨きがかかってね、例えばこんな私でも、人に配慮して言えなかったりしたこともあるわけ、基本的な義理人情は別にして、余計なことはもういい、好きなことだけして、今まで言えなかったことも言ってしまおうと決めたの。裸やらセックスシーンの写真も使いたいんですけど、娘さんもいらっしゃいますよね…って編集者が言ってきたんで、「じゃ、聞いてみるよ」って言って娘に「この写真、本に載せたいんだけど、どう思う」って聞いたわけ、そしたら「いいんじゃないの」の一言。
真弓 娘もやりますね、もう慣れちゃってる……(笑)。
石川 娘もママがこんな女だってわかっているのよ。むしろ、儲けて私達にも貢いでよだって。まったく、私の上をいくわよ(笑)。ってことで、家族がクリアしたら私的にはもう全然問題なし。むしろ、私だって今までそういった仕事をしてきたんだから、その写真の必要性もわかっているわけ、でも、セックスシーンはね、撮りたくて撮った訳じゃないよ。別に人前でやるほど露出狂じゃないし、私の友人であるカメラマンに撮りたいって言われてさ、人を撮ってさんざんさらけ出しているのに、自分が拒否するのはおかしいでしょ。
真弓 インチキ、みたいな。
石川 そう、インチキ。自分もさらけ出せないのに相手にさらけ出してって言えるの。私は特に相手に全てをさらけ出してよ、みたいな撮り方をしてたからね、自分だけカッコウつけてられないじゃない。卑怯だと思うわけ、そういうのって、だからあの写真になったわけ。私の中には主観的っていう言葉しかない。独断と偏見に満ちた…。でも私はそれでいいわけ、だから断われなかったのよ。
サブタイトル3 
石川 私、いつも本作ったら営業するんだけど、今回は群を抜いて売れてる。なぜかっていうと、基地のことだったり、沖縄芝居だったり、そういうテーマは既に誰かがやっているわけ、でも、これは私の面白物語。私が言うのも何だけど、山あり谷ありの人生を歩んでそして文章だけでなく写真も入っているわけ、それで見ていて楽しいっていうのもあるし、とてもいい言い方をすれば、沖縄が見えてくるという副産物もあるわけ。しかも、タレントが暴露本出してヌードになることはできる。でもこの狭い沖縄で、過去の写真であれ、自分の裸をさらけ出して、しかも沖縄の悪口まで言うっていう本はなかったと思う。だから、そのことに対するショックと興味で売れてるんじゃないかと思うよ。反応もいろいろでさ、若い人と中年層の違いが面白いわね。若い子は「わぁ、もう負けそー。自分もクヨクヨせずに開き直って生きていくぞー」っていう感じのメールなわけ、同世代だと「時代背景がよくわかる。病気に立ち向かっている真生さんを励ましたい」とか、病気のことと世代を重ね合わせているのが多いわね。。
真弓 真生さん、タイムスで真生の孤軍奮闘っていうのも連載してるじゃないですか、アレでも結構、赤裸々に病気のことを書いてますよね。
石川 うん、バラシまくっているね、そこでも同じ病気の人からとても励まされたとか言って反響があるわけ。私は、えっ、いつそんなことしたっけっていう感じ、全然そんなこと考えても見なかったけど、結果的にそうなったみたい。それでさ、娘に言われたのよ、「ママ、そんな風に言われてるのに今、死んだらバカみたいだよ、ガンの人の本なんていろいろ書いてあるけど、結局死んでいるからね、あんたもそうなったら、やっぱりガンって死ぬのねって、なっちゃうから、長生きしないとダメだよ」って。そりゃそうだなって思うけど、こればっかりは神様が決めることだからね。
真弓 そうだ、これ、神様の作戦で、ほら、今、真生さんこれまでになくスケジュールたてて今まで以上に仕事しようとしてるでしょ?このまま長生きしたらすごいたくさん仕事出来ちゃいますよ。
石川 確かにね、今まで、いつまでに上げようなんて決めたことないもんね。納得いくまでやってきただけだもん。その途中で、次のテーマとなる人達との出会いもあったりしてハミガキ粉のチューブみたいにいろんなテーマが出てくるんだけど、ちゃんと終われてないし、やりたいことがいっぱい。本当に今は逆算しながら進めている感じ。
真弓 今の真生さんをつくり上げたのはやっぱりあの高校生のとき?
石川 それは、ちょっとわからないけど、スタートだったことには違いないよ、あの時代背景が私をつくりだしたといってもいいでしょうね。今の世の中に生まれてたら、きっとカメラマンになってないと思うよ。
真弓 バラシバラシ本を出してしまった今はどんな感じですか?
石川 全然後悔していないよ。一番この本がいいって言ってくれた親友もいてうれしかった。とにかくガンガン売って、次の仕事がしたいのよ。だから、みんな買ってね(笑)。
沖縄ソウル
石川 真生 PROFILE

1953年沖縄生まれ。日本祖国復帰運動まっさかりの高校3年生の頃、学校にはほとんど行かず反戦反基地運動にのめり込む。その時この燃える島で何かを表現したいとカメラマンになることを決意。対象は「沖縄の人」のみ。自称「沖縄民族主義者」8冊の写真集を出版。 (左写真:「沖縄ソウル」 石川真生の沖縄的生き方&フォトエッセイ。発行:太田出版2,000円(税別)
■石川 真生ホームページ  http://w1.nirai.ne.jp/mao-i/  ■E-mail :mao-i@nirai.ne.jp

Copyright (c)2001-2002 Kobundo Printing Co.ltd. All rights reserved.