びあぶれいく
Orion
沖縄版とりびあの泉 沖縄ならではのスローなトリビアを求めて
屋号はウチナーンチュの顔
 ウチナーンチュの、特におじぃ・おばぁたちの朝は早い。毎朝の儀式のように、新聞のあるコーナーを丹念に読み込む。それが何かというと、死亡広告欄である。全ての死亡広告がそうだというわけではないが、そこにはかなりの確率で屋号が記されている。
 さて、この屋号である。必ずしも沖縄だけではない。全国的にもあるにはあるが、これが厳然と生きているのが沖縄ということになる。「ヤーンナー」とも言うが、それは集落内で、同姓が多いときなどはかなり有効である。なにしろ、集落内の9割が同姓で、そうなると同姓同名も多い。
 前とか後ろとか東とか西、あるいは交番ヌ前などの地理的な付け方がある。あるいは大工とか鍛冶屋とか金細工とか写真屋などの職業的な付け方も。もしくは姓を使っての屋号も存在する。それ以外にも正式ではないが、主の身体的特徴や姿形によって通称屋号とするケースもある。たとえば、辛らつだが「ミッチラー○○」とか。そういえば「カタチキヤー○○」というのもあったな。「フンデー」というのも。カタチキヤーとは、エエ格好しぃであり、フンデーとは甘えん坊というわけだ。
 屋号には幾つかのパターンがある。基本的には長男が屋号を継いでいくが、そうなると頭に次男、三男とする分家のケース、尻に「小」を付けての分家などなど。この分家だが、例として挙げると、仮に宮里という宗家があって、分れは次男宮里となり、その分れは次男宮里小で、そのまたの分かれは前次男宮里小という具合になる。
 ついでながら最近の話題の人を挙げてみると、ちなみに、ゴルフの女子プロ宮里藍さんの屋号は「那三郎屋」。おじいちゃんが那三郎さんであった。
ダイエーホークスの新垣渚さんの屋号は「クミ小」で小嶺に由来している。屋号の法則だと分家とともに新たなものが生まれるので、将来は「ゴルフ屋優作」であるとか、「三男野球小」が誕生していたりして。
宮里 千里 PROFILE

1950年、島尻郡真和志村(現那覇市)生まれ。エッセイストにして沖縄の民俗祭祀の録音記録者。那覇市役所勤務。著書に『アコークロー』『シマサバはいて』(ともにボーダーインク刊)共著に、『ウチナー・ポップ』(東京書館刊)、『沖縄久高島(くだかじま)のイザイホー』(砂小屋書房刊)などがある。

 
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