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28斎場御嶽ものがたりその十四せーふぁーうたき文/亀島靖絵/宮城厚あつし聞得大君・音智殿茂金きこえのおおきみおとちとのもいかね1943年沖縄県那覇市生まれ。劇作家、プロデューサー。主な著書に、「琉球歴史の謎とロマン1~3」、琉球新報新聞小説「三十六の鷹」、沖縄県広報誌「琉球歴史人物伝」、沖縄テレビ「沖縄の昔ばなし」原作、琉球放送「源為朝伝説を追え」脚本、CD「耳で聞く琉球歴史の謎とロマン」など。亀島靖KAMESHIMAYASUSHI若茶良は、松明を手にして石垣の上に立った。暗闇に浮かぶその姿を見て攻め手の軍は一様に声をのんだ。若茶良は、手をかざして呼びかけた。「父上は、何処におりますか?この若茶良は手向かいする気は毛頭ございませぬ。どうか、兵をお引きください」伊敷索按司は、泥田に馬の足をとられ身動きができないながらも叫んだ。「若茶良。お前の言葉にいつわりがなければ、丸腰で出てまいれ。さらば、言い分を聞いてやる」若茶良は、側に控えている重臣の顔を見ると、首を横にふっていた。「若茶良様。なりませぬ。伊敷索按司様は、これまでこの島の根人たちをだましてこられてきた方です。話し合いならば、攻めて来る前にお呼びがあったはずです」「たしかに…。しかし、父上があれほど言われているのに聞かぬわけにもいくまい」「物見の報告によれば、寄せ手の中には、兄上様お二人の兵達も大勢混じっております。事は簡単にはいきませぬぞ」「わかった。もし、不審な動きがあれば合図の火矢を放て」若茶良は、大手門を開き単身、城外へと足を運んだ。若茶良は、風を切る矢音を聞くと身をかがめた。とつぜん、左腕にはげしい痛みを感じた。数本、飛んできた矢の一本が上腕にくいこんでいた。おそらく、功をあせった伊敷索按司の配下が攻撃したものと思われた。若茶良が、門の中に駆け込むと同時に城の中から夜空に火矢があがった。それを合図に、若茶良の伏兵たちが、松明をつけ喊声をあげながら伊敷索軍の後方に攻め入った。突然現れた伏兵に、攻め手の後方は大混乱におちいった。大手門の下まで進んでいた兵には、石垣の上から熱湯が大量に浴びせられた。前に進もうとする兵と、後ろに逃げようとする軍団の間では衝突がおこったが泥沼に足をとられて転倒するものが続出し収拾のつかない戦場となっていた。伊敷索按司は、早まって矢を射た兵に舌打ちしながらも懸命に軍勢をたてなおそうと「しずまれっ。しずまれい。いたずらに騒ぐと敵の思う壺だぞ。騒ぐ者は味方であろうと斬るぞ」と、刀を抜いて叫んだ。しかし、恐怖におちいった軍勢は、闇の中から飛んでくるかも知れぬ火矢を予想し、泥の中の混乱はおさまる様子もなかった。統制のとりにくい混合編成の伊敷索軍は、若茶良があらかじめ用意していた逃げ場に殺到し次から次へと闇の中に消えていった。混乱した兵とぶつかり、伊敷索按司の馬は棹立ちになり按司は田の中に転がり落ちた。伊敷索按司から参戦をとめられていた二人の兄は、わずかな手勢を率いて五百メートル離れた後方に控えていた。「わしに策がある。いう事を聞かねば若茶良の命は、最後にわしが取る」という父の言葉に二人は一抹の不安を感じながらも、命令に従っていた。前方の報告を各々の部下から聞いて、二人は父の反対を押し切ってでも参戦すればよかったと後悔した。「若茶良はわし達にとっては邪魔者だが、やはり父上には血を分けた子供だったのか。この上は二人で若茶良を攻め滅ぼそう。若茶良は、まさか父上は手にかけまい。ここいらで父上の帰りを待とう」兄の中城按司は、具志川按司につぶやいた。その頃、若茶良は、城を出ると父の姿を捜しだし、側に座ると泥で汚れた伊敷索按司の顔を、白布でふいていた。わかちゃらわかちゃらわかちゃらふくへいたいまつかんせいちなはぐんこうほうせいわかちゃらよういにばとつぜんあらふくへいせてこうほうさっとうつぎつぎやみなかきだいこんらんおおてもんしたすすへいいしがきうえねっとうたいりょうこんらんへいちなはあじちなはあじさんせんあにふたりてぜいはなこうほうひかさくこといのちふたりいちまつふあんかんめいれいしたがぜんぽうほうこくおのおのぶかきふたりちちはんたいおきさんせんこうかいさいごとちちことばきわかちゃらわかちゃらわかちゃらころぐすくでちちすがたさがそばすわどろよごかおしろぬのちなはあじわかちゃらちちうえちちうえあになかぐすくあじぐしかわあじかえまてたちじゃまものちちうえちわこどもうえふたりわかちゃらせほろひきごひゃくうまあもんなかかこどうじしろなかよぞらひやあいずくらやみいちようこえわかちゃらてよちちうえどこてむきもうとうへいちなはあじうごさけわかちゃらわかちゃらわかちゃらさましまかたまえよはなちちうえいきあせくねひとちなはあじさまそばくびよこひかじゅうしんかおみまえことばまるごしでいぶんきどろたうまあしみひわかちゃらわかちゃらわかちゃらかぜきやおとひだりうでいたかんてきおもきかたなぬさけきょうふとどろなかこんらんとうせいこんごうへんせいちなはぐんようすしひやよそうぐんぜいやみなかつぼものさわみかたさわすうほんとやいっぽんじょうわんこうはいかこうげきおもちなはあじきみおおてもんひらたんしんじょうがいちなはあじうけんめいぐんぜいはややいへいしたはこあしうすがたみせてぐんうえさまふたりへいことかんたんぐんだんあいだしょうとつどろぬまさおだあじたなかころおふしんうごあいずあしてんとうせんじょうぞくしゅつしゅうしゅうひやはなたちおおぜいままえすすへいうしにたいまつていしがきうえものみほうこくよてなかあにた